東京高等裁判所 昭和29年(ラ)61号 決定
しかし、記録によると、本件は、抗告人を申請人、君塚千代作を被申請人とする千葉地方裁判所木更津支部昭和二十九年(ヨ)第一号仮処分命令申請事件の仮処分決定正本に基きなされた仮処分命令の執行に対し、前記吉田勘定により抗告人を相手方として第三者異議の訴を提起し、且つその執行の停止並びに執行処分の取消を命ぜられたき旨申立てたのに対して、原審が保証を立てしめないで「右執行は本案判決をなすに至るまでこれを停止し、既になされた執行処分はこれを取消す」との決定を与えたのに対する抗告である。惟うに民事訴訟法第五百四十九条により第三者が執行異議の訴を提起した場合は、受訴裁判所はその第三者の申立により、本案判決をなすに至るまで保証を立てしめないで執行の停止並びに執行処分の取消を命ずる裁判をなし得ることは、同法第五百四十九条第四項、第五百四十七条第二項の規定により明白であつて、しかもこの場合同法第五百条第二項に規定するよう制約のないことは、同法第五百四十七条、第五百四十九条、第五百条の規定を対照して疑を容れない。
さすれば、原決定には所論のような違法は少しもなく、その他記録を精査しても、原決定には取消の事由となすに足る違法の点は認められないから、本件抗告は理由がない。なお抗告人は、原決定の執行により回復すべからざる損害を受ける虞があるから、民事訴訟法第四百十八条の処分を命ぜられたしと申立てているが、原決定のような執行停止命令は同法第五百五十条第一項第二号にいわゆる執行又は執行処分の一時の停止を命じた裁判に該当するので、その正本の提出があれば、執行機関は執行を停止すべく、これが停止は停止命令に対して即時抗告の申立があつたと否とに拘らないので、執行停止命令には民事訴訟法第四百十八条第一項の原則の適用はないものと解するを相当とするのみならず、即時抗告の申立ありたるの故をもつて、同条第二項により容易に執行停止命令の執行停止を求めることができるものとすれば、不当の執行行為により権利を害されたとする第三者の利益保護のために認められた民事訴訟法第五百四十七条第二項所定の執行停止制度の目的は簡易に滅却されることとなるところ、この点を無視して原決定の執行停止を命ずべき事情を窺い得る資料もないから、同法第四百十八条第二項による処分はしないこととする。